原作の誕生から35年―。「週刊少年マガジン」で連載され、釣り漫画の金字塔「釣りキチ三平」が、遂に実写版で映画化! 原作のなかでも、三平の“原点”としてファンの間でも特に人気が高いエピソード「夜鳴き谷の怪物」をベースに、三平の成長、家族の絆、幻の巨大魚の伝説を描いています。三平の生まれ故郷である秋田の雄大な自然も作品の見所の一つとなっています。

ストーリー

釣りブームの火付け役

東北のとある川沿いの田舎町で暮らす釣り好きな少年・三平(須賀健太)は、生まれながらの素質と釣り名人と評判の高い祖父の一平(渡瀬恒彦)の指導によって、その腕前をメキメキと上達させ、若干13歳で地元では有名な天才少年と知られていた。

幼馴染みである"ゆりっぺ"こと高山ゆり(土屋太鳳)と釣り三昧の日々を過ごす三平は、村の恒例イベントとなっている鮎釣り大会に参加して、並み居る強豪を抑えて優勝を果たす。

その活躍を見て声をかけてきたのが、アメリカでバス・フィッシングのプロとして活躍する鮎川魚紳(塚本高史)だった。数々の世界大会で好成績を収めてきた魚紳だったが、釣りに対してかつてのような情熱を持てなくなっていた。

そんな彼にとって、他人と競うためではなく、ただ純粋に釣りを楽しんでいる三平の姿は、自分が失いつつあるものを気付かせてくれた新鮮な存在として輝いて映るのだった。魚紳から「夜泣谷の巨大魚」の伝説を聞かされた三平は心を躍らせる。

そんなある日、三平の姉である愛子(香椎由宇)が東京から三平の住む村を訪ねてきた。三平の父・平(萩原聖人)が若くして亡くなった後、母は愛子を連れて東京へ上京していたのだが、今回の訪問の目的は三平にしっかりとした教育を受けさせるため、村を離れて東京に行くことを説得するためだった。しかし、豊かな自然に囲まれ、祖父と共に釣りを中心に生活してきた三平は首を縦に振らない。

祖父の一平は、三平が魚紳から聞かされた伝説の「夜泣谷の巨大魚」に意欲を燃やしていることから、「三平が巨大魚を釣ったら、彼の好きなようにさせてやれ。」と申し出る。祖父の申し出をしぶしぶ了承した愛子は、三平、一平、魚紳たちにと共に、伝説の楽園である夜泣谷へと向かうのだった…。

道なき道を進んだ山の奧の奧、熊が出没しそうな場所の渓流で、彼らは伝説の巨大魚を目にする。興奮した三平は「もし釣れなければ、村を離れて東京で暮らす」という愛子からの約束も受け入れる。三平は自身が持つ全ての能力・情熱を振り絞り、幻の巨大魚に挑み遂に釣り上げた。

無邪気に歓喜する三平の姿を見て、愛子は彼にとっての本当に幸せな生活は東京で教育を受けることではないと悟る。その姿を目の当たりにした魚紳もまた、いつしか失いかけていた釣りへの情熱を取り戻すのだった…。別れ際、「また来るから」という言葉を残して愛子は東京への帰途に着く。

ある日、遠く離れたアメリカから魚紳からの手紙が届く。釣りへの情熱を取り戻した彼は再び、バスプロとしての活動を続けることを決断したという。そして東北のとある村では、生まれ育った故郷の川でいつもと変わらず釣りを楽しむ三平の姿があった―。

出演者

初の実写映画化で原作ファンの期待に応えるべくメガホンを取るのは、『壬生義士伝』『陰陽師』をはじめ、モントリオール世界映画祭グランプリ、アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『おくりびと』など国外でも高い評価を受けている滝田洋二郎。本作品でも物語の舞台となる秋田県の豊かな自然を背景に、スケール感のある釣り映像と、三平一家の繊細な心情をじっくり演出している。

主人公の三平を演じるのは、原作者の矢口高雄をして「私のイメージにぴったり」と言わしめた須賀健太。『ALWAYS三丁目の夕日』の名演技、初主演の『花田少年史 幽霊と秘密のトンネル』で第30回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し、一躍全国区となった若手俳優が元気いっぱいの三平を等身大に演じつつ、役作りのために半年間の特訓を行った釣りシーンでその成果を見せている。

若くして父を亡くした三平の親代わりとして、また釣りの師でもある祖父の一平には、ブルーリボン賞、日本アカデミー賞(最優秀)、キネマ旬報主演男優賞など数々の賞を受賞してきた日本を代表する名優の渡瀬恒彦、三平との出会いをきっかけに再び釣りへの情熱を取り戻す魚紳には『木更津キャッツアイ』『タイガー&ドラゴン』など、宮藤官九郎脚本作品に数多く出演している若手演技派の塚本高史を起用。

原作にはない映画版オリジナルの役である姉の愛子を『ローレライ』の香椎由宇が演じ、三平の幼なじみ、ゆり役には約500人の候補者から抜擢された新人の土屋太鳳が初々しい魅力をみせている。

秋田県を中心に、鮎釣りの川、絶景の滝、築100年の藁葺きの家など、日本が失いつつある“原風景”を見事に映し出した撮影シーンに癒されるのも、本作の大きな魅力。実写化が不可能な伝説の巨大魚などのシーンは、『ALWAYS三丁目の夕日』で昭和の風景を見事に甦らせた、日本VFX界の最高峰、白組が担当している。大自然に溶け込んだ驚異のビジュアルは、現在だからこそ可能になったといえる。

原作が連載されていた当時は日本の随所で見られたノスタルジックな風景と、最新のVFXが見事に調和し、そこに名匠の冴えわたる演出、キャストたちの絶妙なコラボレーションが加味されている本作品は、原作のファンならずとも注目の一本となっている。